「このままでは、これまで投資してきたものが、全てパァになってしまう。」
それだけはなんとしても避けなければいけない。
「解決方法は絶対ある! その一つが見つかっていないだけ!」
ふと、技術者だった時に、大切にしていた言葉を思い出した。
それを信じて、リングピローの商品開発に再び気合を注入した。
暫くして、僕に一つのアイデアが舞い降りた。
「漠然と商品開発をするのではなく、テーマやストーリーを決めてからの方が進めやすいんじゃないだろうか?」
早速、仲間に伝えてみた。
「最初の商品として四種類くらい作りたい。開発する時に、そのシリーズのコンセプトやストーリーがあった方が進めやすいと思うんだ。そのストーリーに相応しい神話や物語の様なものって知らないかな?」
「例えば春夏秋冬の星座の物語とか……。」
参加していたメンバーがクスクス笑っている。
四十過ぎのオッサンの口から「星座の物語」なんて出てくると思っていなかったからだ。
「星座の物語って、悲劇が多いんですよね~~~!」と、Tさんから手厳しい意見も飛び出した。
でも、それがきっかけになった。
メンバーからいろんなアイデアが出てきて、「春夏秋冬の女神」という一つの方向性が定まった。
方向性が定まると、開発作業はスムーズに進みだした。
時間はかかったが、なんとか代表作となる四つの商品を完成させることができた。
大きな壁を一つ越えた感じがした。
代表作に続いて、廉価版を商品ラインナップに追加し、ネットショップを構築することにした。
2009年3月、ショップオープン。
ところが……注文が入らない。1ヶ月経っても2ヶ月経っても売れない。
ようやく最初の一つが売れたが、オープンから丸3ヶ月という日だった。
2つ目の注文が入ったのが、更にその1週間後。
「何かがおかしい!」
「他社に比べて値段が高いことも要因の一つだが、他にもっと大きな原因があるはず。」
そんな時、一件の問い合わせが入った。
「手作りできるキットの様なものはないのでしょうか?」
そう言えば、先日お買い上げいただいたお客様アンケートにも、
「本当は手作りしてプレゼントしたかったけど、御社に素敵で気に入ったリングピローがあったので購入しました。」とあった。
「もしかしたら、多くのお客様が求めているのは「手作りキット」なのでは?」
急遽、廉価版商品の手作りキットを開発し、ネットに掲載した。
一気に売れ出した。
一ヶ月数万円の売上が10倍になり、9割以上がキット商品の注文だった。
お客様の真のニーズは、リングピローをプレゼントしたいのではなく、心を込めて手作りした想いをプレゼントしたいという事だと気付いた。
事業の立ち上げ時には、お客様の真のニーズを把握しきれていないことが多い。
お客様との対話は重要だが、特に事業の立ち上げ時は最も重要なことだと気付かされる出来事になった。
数十万円の売上が見込める様になり、広告を使って集客を始めた。
弊社の商品は原価率を抑えていたので、広告を出しても利益は出ていたが、費用はかさむ一方だった。
なんとか集客費用を抑えたいと思い、SEO対策をプロにも相談しながら実施した。
すると、2ヶ月も経たないうちに、ビッグキーワードの「リングピロー」で9位に上がった。
月商はなんと、百万円を超したのである。
集客コストを抑えて売り上げを上げられたので、利益を大幅に増やすことができた。
ところがこの話には続きがある。