アフターコロナのネットショップビジネス
2020年2月下旬、新型コロナウイルスがクルーズ船や屋形船で話題になっていたころ、僕は6年以上毎月続けてきた「ネットショップ世紀塾」に参加していた。
初めて魚津で開催し、その後の懇親会では「魚津の魚は富山の中でも更にレベル高いね!」など言いながら、新鮮な魚とおいしいお料理とお酒で話を弾ませていた。
話題の中心は、世紀塾で強烈にインパクトのあった「5G」と「AI」について。
数年後には来るであろう想像を絶する時代の変化。
ありとあらゆるものがネットにつながり、IQが10000に到達するAIを持ったロボットが共存する時代がやってくる。
「さて、僕たちのビジネスも変わらざるを得ないけど、どうしていく必要があるかな? まだ整理もつかないね!」
誰もがそんな状態だった。
ホテルに帰り目が覚めると、新型コロナウイルスの陽性患者が首都圏から富山に旅行で来ていたと報道があった。
「これでいよいよ富山も陽性患者が出るかな? 昨日はよく飲んだし騒いだけど、僕たちは大丈夫だったかな?」
なんて少しは思ったけど、マスクもつけず帰路についた。
それから1か月余り、「新型コロナウイルス感染に係る緊急事態宣言」が発令され、多くのお店が営業自粛、自宅でのリモートワークという、今まで経験したことのない現実を目の当たりにすることになる。
弊社のクライアントでネットショップビジネスに力を入れているところはあまり影響はなかったが、まだこれからというところや実店舗を中心にビジネスをしているところは大変な状況になった。
店舗の家賃、従業員の給与など固定費の支払いがあり、店内飲食からテイクアウトのお弁当に切り替えてもさほど売り上げにはならす、資金がショートしてもおかしくない状態。
徐々に給付金や補助金も揃い始め、ネットショップでの販売に乗り出してくる会社が急増し始める。
ただ僕は、安易なネットショップ出店について、かなり否定的だった。
「ネットショップを構築すれば、売上が上がる」そんな甘い世界ではない。それでもショップを作って欲しいとごり押しされ、ほとんど売り上げも立たず放置された嫌な経験を持っていたのだ。
モールに出店して広告費をかければ一時的な売り上げを作ることは可能かもしれない。
でも、ビジネスは目先の売上ではなく、継続的に得られる利益が必要だ。
その為には戦略やプランニングが必要なのだ。
僕はこう思っている。 「ビジネス構築は映画作りだ!」と。
まず今起こっていることを整理したい。
もちろんコロナウイルス禍という事だが、これによって多くの人の生活や思考、行動が変わったのだ。
家から出る必要がなくなったので、外出用の服も靴もさほどいらなくなったし、外食も飲み会も減っただろうが、時間は余るようになった。
つまり、家の中にいる時間が増えた人が多くなったのだが、この変化の中で新たに生まれる「不安」「不満」「不便」「欲求」に応える商品やサービス、そしてビジネスが求められる。
先日なにげなく見たテレビ番組で紹介されていた京都の和菓子屋さん。
あんこを自宅で作れるキットを商品化し、大幅に売上を伸ばしたとのこと。
まさにこのような商品が求められている。
すでに顧客を抱えているネットショップであれば、時代にあった新たな商品を開発し提供すれば良いのだろう。
でも今から新規にネットショップを立ち上げる段階なのであれば、それだけではまだ足りない。
今も多くの企業がインターネット販売に参入してきているし、この流れはさらに加速する。
他店との違いが明確に伝わる形で、もう一つ新たにビジネスを立ち上げる覚悟で取り組むことが必要なのだ。 その為の計画が必須である。
計画の次にすべきこととして、とても大切と考えるのが共感・共鳴作りだ。
人は説得されることを嫌う。
言葉で伝える事ではない、五感に直接感じてもらい、共感・共鳴してもらう要素を設計する必要がある。
「うまく説明できないけどこのお店が好き!」を創り出す。
色合いとか雰囲気とかをコンセプトに合って顧客対象が好きになる様な設計だ。
そしてもう一つとびっきりに大切なもの、それは「ストーリー」創りだ。
このショップを、事業を始めるに至るまでの経緯を、顧客に共感・共鳴してもらえる様に感動の物語を構築する。 伝え方は5Gの時代が来ているので動画が効果的だが、まずは文字でストーリーを作ることが大切。
続いて行うのが、商品作り・アレンジだ。
どんな商品であれば、コロナ禍での欲求に応えられるのか?
この商品にはどんな価値があり、どんなベネフィットが手に入るのか? 徹底的に研究し商品化する。
ここまで出来て、いよいよネットショップの構築となる。
これまで検討を重ねてきたものを形にして行き、完成したら集客・広告になる。
もちろん集客・広告にも、これまで検討してきたことがしっかり表現することになる。
冒頭で「ビジネス構築は映画作りだ!」と伝えた。
プランニング、共感・共鳴とストーリー作り、商品をアレンジ、ショップ構築、集客・広告。
商品アレンジが俳優の演技、ショップ構築が映画の撮影・編集とすれば映画作りと完全一致ではないだろうか?
予算はマチマチだろうが、少ない予算でもこの手順は省けない。
伝えたい目的があって、伝わるストーリーがあって、共感できる商品があって、全体の世界観が気持ち良い。 この状態を実現できて、初めて商品が売れ出し、売れた後のフォローアップ・コミュニケーションでリピート購入が実現する。
コロナウイルスは生活スタイルを大きく変える出来事だった。
ただよく考えてみると、コロナの出来事がなかったとしても、インターネットやAIが新たな土台となり、その上で人々の生活が成り立つ、そんな時代が目の前まできていた。
あまりにもじんわり浸透してきていたがために、それに気づかずデジタル格差が大きく広がっていたのだ。
コロナウイルスは、そんな格差を気付かせる機会にはなったのではないか?
生活の横にあったインターネットやAIは、一気に生活の土体のポジションに滑り込んだ。
もう避けては通れない、そんな時代に向かって何を変えて行こうか?